ABYDOS
country: Germany
style/genre: Prog Metal, Symphonic Rock, Prog Rock, AOR, etc.
website: http://www.vandenplas.de/
related bands/artists: Vanden Plas, etc.
similar bands/artists: Vanden Plas, Dream Theater, Shadow Gallery, Ayreon, Queen, Section A, etc.
artist info: Vanden Plasのリードシンガー、Andy Kuntzのソロ・プロジェクト。



Abydos - s/t (The little boy's heavy mental shadow opera about the inhabitans of his diary)
InsideOut
(2004)

昨年の後半辺りから、話題となっていたVanden PlasAndy Kuntz (vocals)が中心のソロ・プロジェクト。元々Andy Kuntzは、Vanden Plasの活動と並行して「Jesus Christ Superstar」, 「Rocky Horror Show」, 「Evita」, そして「Nostradamus」などの著名なミュージカルや舞台活動を、1980年代の初期から続けているミュージシャンとして知られております。現在では、Vanden Plasの活動も既に20年に及ぶとのことで、Prog Metalシーンに置いても、バンドでの活動も非常に高く評価されていることは言うまでもございません。

このあまり聞き慣れないAbydos (アヴュドスあるいは、アビダスと発音するらしい)というのは、王家の谷などが存在するエジプトは、ナイル川の西に存在する古代都市の名前、場所だそうであります。このアヴュドスには、古代エジプト人達がオシリスを崇拝するための場所があったらしい。そして、その場所では音楽や演劇などが披露されていたという・・・・つまり、そういった音楽を演奏したり、演劇などが今日でいうミュージカルやブロードウェイなどに代表される舞台劇の起源になったのが、Abydosであるという説があるのです。そういった見地から考えられるように、Andyは自分の記念すべきソロプロジェクトの名前にAbydosという名前を選んだのでありましょう。また、この作品には故人となってしまった大切な4人のキャラクターを投影させているようにも見受けられる。ストーリーラインは、ブックレットに詳しく書かれているので、そちらの方に目を通してもらいたい。確かに古代エジプトにちなんだキャラクターがいくつか登場するものの、内容は現代にも通じるストーリーラインの要素も見受けられる。音楽とストーリーラインを見事に融合しているという点において、これまで彼がミュージカルやVanden Plasの音楽活動を通じて培ったものを見事に反映している。

さて気になる音楽性だが、基本的な部分はVanden Plasに通じる部分が大変多いことに気づくでしょう。楽曲制作面だけでなく、Andy Kuntzがプロデュース面においても、これまでVanden Plasに深く関わっていることが伝わってくる。確かにVanden Plas的な技巧的なProg Metal楽曲が含まれているが、ミュージカルやオペラなどにも通じるオーケストレーションやシンフォ的な要素も大変濃い。また、テクニカルに攻勢をかけるだけでなく、フックのある魅力的なフレーズやメロディーも随所に配されているので、ある意味Vanden Plasを聞いたことがない人たちにも楽しんでもらえる楽曲が収録されています。また、このAbydosには、助っ人としてVanden Plasの僚友であるAndreas Lillが、迫力あるドラミングで参加しています。そして、なんといっても、このプロジェクトにおいて重要な存在となっているのは、Stefan GlassMichael Kraussの両人です。この2人のギターとキーボードによるサウンド・オーケストレーション〜リードプレー・バッキングに至るまで、いい味わいが出ております。時にテクニカルに攻め込み、時にはAndyの歌メロをサポートする役に徹していますね。ソフト面からハードな面に至るまで、音作りの構築には大変気を遣っている様子が窺えます。アルバム制作の総合監督という役割を始め、ストーリーライン、自分の歌に至るまでAndy Kuntzの才能が思う存分発揮されていると思います。

オープニングのThe Inhabitans of His Diaryは、とてもスリリング且つダイナミックに展開されております。The God Thingに通じる躍動感と煌きがあって、大変素晴らしい。その後、2曲目のYou Broke The SunでAndyの歌がソフトに、そして次第に立ち上がっていきます。この曲のリフレインとフックは、非常に素晴らしい。何回でも楽しめるキャッチーで良質な楽曲に仕上がっています。3曲目のSilenceでは、再びVanden Plasタイプの躍動感のあるProg Metal的楽曲が登場。どちらかというと、この楽曲は、VPと比べると割とストレートなアプローチかなーと思いました・・・うむ、この曲もいいです!。4曲目のFar Away From Heavenでは、Andyの特性をいかした非常に優美なバラード的な仕上がりです。5曲目のCoppermoon (The Other Side)では、また緻密且つコンプレックスな側面が登場します。6曲目のHyperion Sunsetは、スペーシーなキーボードが使用されており、やや実験的なサウンドが見受けられますが、聴いていて心地は良いです。7曲目のGod's Driftwoodでは、一転してアコースティックギターが登場し、後半で次第にスリリングになるといった風情。8曲目のRadio Earthは、まず本家Vanden Plasでは、多分聴くことの出来ないモダンなアプローチを取った、不思議な浮遊感とアンビエンスな要素を含んでいます。とても、ポップでキャッチーな佳作になっていて、ラジオヒットも狙えそうなコンテンポラリー寄りな楽曲でもあります。楽しかった8曲目とは打って変わり、9曲目のタイトルトラックAbydosは、王家の谷を連想させるダークでムーディーな雰囲気に一転しますが、シアトリカルな作風。なぜか、この楽曲を聴いているとSavatageStreets: A Rock Operaに通じるものがあるのではないかと感じました。10曲目のGreen’s Guidance For A Strategy Adventure Gameは、ボーカルエフェクトがかけられた奇妙なもので、スペーシーなキーボードサウンドと相まって独特の空間が漂ってます。そして、後半のクライマックスとなる11曲目のWildflowerskyとラストフィナーレA Boy Named Flyになだれ込んでいきます。 11曲目はメロディックなギタープレーなどを中心に楽しんでいただきたい楽曲だと思いました。12曲目となるA Boy Named Flyは、ラストに収録されているだけありバラエティに富んだ、いろんな要素が詰め込まれたエピックな内容となっています。後半には、虚をつかれるかのように美声の女性ボーカリストのアドリブも楽しむことができます。ちなみに、Flyとは、この物語の主人公的存在の男の子です。その他にも敵役のGreen、物語のナレーションを務めるMitoなどといったキャラクターが登場していて作品を面白いものにしてます。このキャラクター達のアートワークの原型は、意外にもAndy Kuntz本人によるものだという。かなり卓越したイラストレーションやペインティングの才能も持っているとのことで、驚かされる。最終的なアートワークは、女性アーティストのLi-wen Kuoによって手がけられているとのこと。

とにかく全編に渡って、非常に上手く配置された楽曲や起承転結や流れを大事にした作風という印象です。全編に渡って繰り広げられている、スリリング且つダイナミックな演奏。静と動のコントラストなどにも気を配っており、細部に渡って作りこんでいる様子が窺えました。間違いなくVanden Plasのファンを始めとするメロディアス系統のProg Metal音楽が好きな皆さんにお薦めです。これまでにVanden Plasを聞いたことがない・・あるいはProg Metalを聞いたことがないHR/HMファンやメロディアスなProg Rock、そして一般の音楽ファンにも楽しんでいただける作品ではないかと思います。(購入盤Review)

PILGRIM WORLD推薦盤

Back to [A] Section
Back to Review Index (all genres)

Go to Top Page